「3」には独特の安定感がある
朝日新聞のコラム「天声人語」2009/07/02付より引用する。
いろいろとある数字の中でも、「3」には独特の安定感があるようだ。三羽ガラスに三大美人、三位一体もあれば三種の神器もある。三役、三悪、三部作……腹に落ちておさまりがいい▼
さて、同じ「3」でもこちらはどうだろう。幼い子を乗せる自転車の「3人乗り」が、きのうから天下晴れて認められるようになった。子育てに奮戦するお母さんたちの声が、行政を動かした形である
「三本の矢」「三すくみ」もこれらに当てはまるだろう。簡単に言えば、「3」はバランスが良い。
「石田流本組み」の復権に期待
上記例の「3」は、いずれも数量を表しているのに対し、「三間」は飛車の筋の話なので、実は全然意味が違う。
とはいえ、三間飛車戦法の中で非常に左右のバランスの良い形がある。それが「石田流本組み」。これは▲9七角と9筋に角が上がる石田流のことを指す。
「ノーマル三間飛車からの石田流」(序盤早々に▲7七角と上がった後、相手の持久戦構想を見て▲7五歩〜▲6八角(▲5九角)〜▲7六飛)として組む石田流)よりも、▲9七角と上がる石田流本組みのほうが、左右のバランスが良い。
石田流本組みに組むには3つの障害がある。
- 居飛車側が早々に飛車先を突き越してきた場合、▲7七角と上がる必要があるので、石田流本組みに組むことができなくなってしまう。
- 例え▲7七角と上がることなくすんなりと▲7六飛と上がる形が作れたとしても、現状の定跡では棒金が脅威なので、対急戦に対して石田流本組みを用いることは難しい*1。
- 対持久戦(居飛車穴熊)における石田流本組みの勝率は、プロ間ではあまり高くない。
「1」に対しては改善策は無さそうだが、後手番にて少なくとも升田式石田流(角交換型石田流)を目指せる「2手目△3二飛戦法」が現れたのは衝撃的だった。
「2」、「3」に対しては、石田流側にも何かしらの改善策が有り得る。これらを改善し勝率を上げることで、石田流本組みがプロ・アマ棋界双方で数多く指されるようになることに期待したい。バランスが良く美しい石田流本組みは、将棋入門者に対する好形の見本ともなっているし、もっと評価されるようになるべきだ。
*1:代わりに、棒金には8八角型で待機し石田流側の左金を繰り上げて対抗する形が多く指されている。
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