「局面図の作り方」の前に
将棋の解説に無くてはならないものとして、局面図(参考図参照)がある。文章だけの説明では、理解度に限界があるからだ。まさに「百聞は一見にしかず」である。
局面図を作成するためのツールはいくつかあり、それらについて紹介するエントリーを書こうと思っていたのだが、その前に、将棋書籍に載っている局面図はどのようなフォーマットなのだろうと確認してみたところ、1つに定められているわけではなく、いくつかあることに気付いた。せっかくなので、ここで気付いた範囲内でまとめておきたい。なお、「▲」となっているところは実際には五角形の駒の形状だ。星マーク(3×3の位置に4つある黒点)表示をしている書籍は見つけられなかった。
タイトル部分について
タイトル部は、局面図の上にあるのが一般的だが、下記の通り例外もある。
「将棋世界」、日本将棋連盟発行の書籍
(第1図は▲7六歩まで)
カッコがシンプルに「( 」であることが特徴的。なお、「将棋年鑑」(平成21年度版を調査)ではタイトルが局面図右側に縦書きになっているのがユニークだ。また、新装版「升田式石田流」(升田幸三実力制第四代名人 著)では下記のNHK方式と似た(ただし「第」が付いている点が異なる)
第1図(▲7六歩まで)
という方式をとっていた。他は所有していないのでわからないが、日本将棋連盟発行の古い書籍は一貫して後者の方式なのかもしれない。
将棋年鑑 (平成18年版) | |
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「NHK将棋講座」、NHK出版の書籍
1図(▲7六歩まで)
指し手のみをシンプルな「( 」でくくる方式。NHK出版で調査した書籍は「久保利明のさばきの極意」(久保棋王 著)だが、この中では「1図」の前に「●」マークが付いた
●1図(▲7六歩まで)
となっているのが特徴的。
NHK将棋講座 2010年 02月号 [雑誌] | |
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上記以外
【第1図は▲7六歩まで】
力強い「【 」でくくる方式。
「上記以外」とまとめたが、具体的には「週刊将棋」、MYCOM(毎日コミュニケーションズ)、浅川書房、創元社、講談社、河出書房出版社、中央公論社の書籍を調査した。ただし、浅川書房でも「相振り飛車を指しこなす本」(藤井猛九段 著)はシンプルな「( 」を採用していた。また、中央公論社の書籍としては「シリコンバレーから将棋を観る」(梅田望夫 著)を調査したが、この書籍ではタイトル部が図面の下にある形式をとっていた。
相振り飛車を指しこなす本〈1〉 (最強将棋21) | |
藤井 猛
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持駒部について
駒マーク、名前(または「先手/後手」)、そして持駒の内容(持駒が無い場合は「なし」)が表記されるのは共通だが、日本将棋連盟発行の書籍の場合は、名前と持駒の内容の間に「持駒」の2文字がある。
まとめと考察
これまでずっとこれらのような表記の違いがあったわけだから、日本将棋連盟の方針としては、特にフォーマットを統一する意思は無いのだろう。
ただ個人的には、統一されている方がやりやすい。2009/12/27のエントリー『「最新戦法の話」英訳プロジェクト』で述べたように、現在私は海外の将棋ファン向けに英語で将棋情報を発信するサイト(「Shogipedia」)に微力ながら協力しているわけだが、できればこのサイト上には統一方針に則った局面図を載せたいのだ。個人的に「【 」でくくる方式が力強く見栄えがよいと感じ、実際この方式が一番用いられている*1ので、私はこの方式で図面を作成してこのサイトに載せている。海外の人がいずれ日本の書籍等に目を向けた際に、共通した見栄えになっているほうがより自然に受け入れられるに違いない。
できればフォーマットは統一してほしい。ま、私自身もついこの前まで気付いていなかったくらいで、些細なことなんですけどね。
*1:これからは、従来日本将棋連盟が担ってきた書籍をマイコミが担当することになるらしいので、よりその傾向は強くなるはず
コメント
コメント一覧 (2件)
良く調べましたね。感心です。
> muhamadoさん
ありがとうございます。
意外にいろいろな種類があることがわかり、それをまとめておくことができたのは収穫でした。