「将棋:世界普及への新たな展開」
10/09、東京工業大学・蔵前会館くらまえホールで行われた題記のシンポジウムに行ってきた。
将棋を世界に広める会・理事長挨拶のあと、第1部に「海外普及の期待と展望」と題した羽生善治名人の講演、第2部にパネリスト5名(次回エントリーにて後述)によるパネルディスカッションが行われた。普通は、羽生名人の講演目当てに会場に足を運ぶのが自然だと思うが、私の場合はむしろ第2部のほうに注目していた。
がちがちにトーク内容をコピー、またはICレコーダなどで記録してきたわけではなく、感心した部分に留めてメモしてきたので、以下箇条書き形式で簡単に紹介させていただく。私の意訳や超訳が含まれている部分もある(正確な文言は「ISPSシンポジウム記念講演 - ”玲瓏”管理人のつぶやき」様を参照されたい)。
やや長くなってしまったので、本エントリーではまず第1部の羽生名人の講演を紹介する。
第1部 羽生善治名人の講演より
- チェスの書籍を読むことがある*1が、日本語の書籍はほとんどないので英語の原書を読むことになる。それでも、慣用句やきまった用語が用いられているので、慣れたらスラスラ読めるようになった。将棋でも海外に対してそうなるとよい。
- 社会主義、共産主義国家にはチェス強豪、というかボードゲーム全般において強豪がそろっている。国家的にボードゲームのプレーヤーへのサポートが手厚い。
- ネットがいくら発展しても、実物の盤駒は重要。外国の方にとって実物の盤駒で指せることは大きなモチベーションになる。なおモチベーションという点で、感想戦もとても重要。
- チェスではICC(インターネットチェスクラブ)というオンラインチェス対戦サイトがあり、質問したら答えてくれるボランティアがいる。将棋でも、世界に対してこのようなサイトがあるとよい。
- 筆者注:今調べたところ、確かにあった。「Internet Chess Club: Where the Grandmasters Play Online Chess」・・・有料会員制のようだ。
- 浅川書房さんと、いわゆる「フリー」モデルで海外向けに書籍を販売した。
- 筆者注:手元のメモ不足。アマチュアの将棋に指南をするスタイルの棋書「Habu's Words」(「上達するヒント/羽生の奥義12/HABU'S WORDS @将棋 棋書ミシュラン!」参照)のことだったはず。ただ、どうフリーモデルだったのか失念した。
Habu's Words | |
Yoshiharu Habu Tony Hoskings Yamato Takahashi
Shogi Foundation 2000-12-18 |
上達するヒント (最強将棋レクチャーブックス(3)) | |
羽生 善治
浅川書房 2005-01-31 おすすめ平均 |
2010/10/15追記
こんなエントリーを見つけた。羽生名人はこの棋書について語っていたかもしれない。
(追記ここまで)
- 棋は対話なり。本気で相撲をとるのは難しいが、将棋はいつでも本気で指せる。一局指せば相手の人となりがわかる。
- (中国・上海で将棋が盛んな件について質問を受け)中国はボードゲーム全般に力を入れている。チェスも強く、団体戦なら世界一かもしれない。国が手厚いサポートをしている。将棋を指す人も、奨励会に入る人(参考:「14歳の中国人が奨励会合格 外国在住者では初 - 47NEWS(よんななニュース)」)も、今後もっと増えるかもしれない。人口が多いしポテンシャルもある。
- (コンピュータ将棋との付き合い方について質問を受け)コンピュータが、将棋入門者に効率良く指導できるソフトになるとよい。そうなるまでには時間がかかりそう。
- (コンピュータ将棋が今後将棋を初手から解明してしまったらどうするか、との質問を受け)「NP問題」があるので大丈夫です(キッパリ)。時間的な制約があるので解決できない。解明はされないので心配要りません(にっこり)。(参考:「NP - Wikipedia」)
第1部感想、そして羽生名人は第23期竜王戦出陣へ
羽生名人、多岐に渡りなんでこんなに博学なのだろうか・・・信じられない。「NP問題」とかさらりと答えているところが恐ろしい。実はすでにコンピュータ将棋との対局に向けて準備万端なのだろうか。
そんな羽生名人、明日から第23期竜王戦の初戦に挑む。ほんの数日前に行われるこの講演を事前に快諾し、講演に臨んでいるわけだ*2。これまた信じられない。
ぜひタイトルをとり、史上初の永世七冠に輝いてほしい*3。
2010/10/17追記
続き(2)を書きました。
2010/11/23追記
ブログ「新着情報 - 将棋を世界に広める会」にて、羽生名人の講演全文が載っていたので、紹介させていただきます。
*1:羽生名人はチェスでも日本トップクラス(一時期トップ)の実力を誇る。詳しくは「羽生善治 - Wikipedia 8.1 チェス」等を参照。
*2:羽生名人は2008年にも、中国・北京(!)で講演をした数日後に名人戦に挑む、という鉄人っぷりを披露した。参考:「AISEP2008」の一環で羽生善治二冠が北京で講演_人民中国
*3:はっきり言ってしまうと、このタイトル戦、私は羽生名人を応援している。
コメント
コメント一覧 (2件)
第二部は私もどうしようかと思ってます。会がこの講演およびパネルディスカッションのコンテンツをどう処理するのか見えてきていないこともありますが。川崎さん寺尾さんの内容は既知の部分が多く安心して聞けましたが青野先生、まどか先生、ピノーさんの話は初めて聞く内容が多く新鮮に聞こえました。私のブログではこれらの内容を踏まえ具体的にできることは何かを探っていきたいと思います。
> たいがあさん
なるほど。
私の第2部は、第1部と同様パネリストの皆さんの活動内容発表を紹介させていただきます。とくに私自身の意見は載せません。
重複は気にせず自由に書けばいいと思います。