猫だまし戦法 by Bonanza(ボナンザ)

2008年1月23日・24日に行なわれた「第3回 コンピュータ将棋 世界最強決定戦 2008」にて、ボナンザが「猫だまし戦法(初手▲7八飛戦法)」を2度も採用していたことがわかった。

将棋好きで知らない方はいないと思うが、一応「ボナンザ」について前置きしておくと、2006年5月に行われた第16回世界コンピュータ将棋選手権大会に初出場して初優勝してしまうほど優秀な思考ルーチンを持った、フリーウェアの(!)将棋対局ソフトである。詳細は下記等を参照下さい。
「Bonanza - Wikipedia」
「Bonanza - The Computer Shogi Program」

「第3回 コンピュータ将棋 世界最強決定戦 2008」は、「激指」、「YSS」、「TACOS」、そして「Bonanza」という屈指の将棋対局ソフト4チームの間で、リーグ戦形式で行なわれた。このボナンザが、「激指」と「TACOS」相手に猫だまし戦法を採用した(対YSS戦では後手番だったため採用できなかったようだ)。結果は、激指に負け、TACOSに勝ち。
これは理にかなった作戦かもしれない。以下は仮説。ボナンザのほうは、初手▲7八飛以降の検討手順を特殊定跡データベースとしてあらかじめ登録しておく。後手を持ったコンピュータにはおそらくこんな初手に対する定跡データベースは持っていないだろうから、早くも定跡手順をはずされた格好となる。以下、後手が落ち着いた手順を選んできた場合は普通に三間飛車へ進めて互角(対「TACOS」戦)。後手が思考結果で「先手陣に隙あり」と判断し速攻をかけてきた場合は、何も思考せず特殊定跡データベース通りに狙い打てばよい(対「激指」戦)。
ところで、その特殊定跡データベース(あくまで仮説)に驚かされる。初手から▲7八飛△3四歩▲4八玉△6二銀までは、「猫だまし戦法講座」でも述べている「猫だまし戦法としては」想定内の手順だが、なんとこのタイミングで▲7六歩!(第1図)

ここまで激しい特殊定跡データベースだとは。上記講座で私は普通に▲3八玉を推奨している。ボナンザは、最近流行の「後手番猫だまし戦法(2手目△3二飛戦法)」よろしく、△8八角成▲同銀△4五角の筋を恐れず、むしろこの順を誘い自分の土俵に引っぱりこもうとしている。△4五角以下の展開をプロ棋士にでも質問し入手しないと、優秀な特殊定跡データベースはなかなか作れないと思うのだが・・・。

それにしても早い動き。「先手番なのだから、一般の定跡通り進めてじっくり戦いたい」という戦略はここにはない。先手番でも研究手順に引っ張り込んで積極的に良くしようとしている。超序盤(対局開始から10手以内くらいまで)の研究への比重が非常に高くなっている近年のプロ棋界に、なんだかコンピュータ将棋界も追従しているようで興味深い。

さて第1図以下、後手激指は△8八角成。▲同銀の一手に勢い△4五角といくかと思いきや、じっと△2二銀!「超序盤に定跡をはずされた場合、しばらくは激しい順は選ばない」などの特殊条件が存在するのか、はたまた単に△4五角は△2二銀より劣る次善手(or悪手)と判断したのか。△2二銀以下は▲3八玉△3三銀▲5八金△3二金▲2八玉△4一玉と進んだ(第2図)。

第2図から、ボナンザは升田式石田流には進めず、穴熊に組んでから▲7七銀〜▲6六銀〜▲8八飛〜▲7七桂と、角交換四間飛車穴熊によくある順を選択した(第3図。角交換四間飛車については「角交換振り飛車」(畠山成幸七段 著)等を参照下さい。なおボナンザは穴熊が得意といわれている)。ボナンザの特殊定跡データベースの範囲内なのだろうか。

「第3回 コンピュータ将棋 世界最強決定戦 2008」のサイトにて、この2局を含むすべての棋譜が閲覧できるので、興味のある方はご参照下さい。

また、「激指」、「YSS」、「TACOS」については下記サイトをご参考下さい。

2008/03/20追記

今改めて第1図を冷静に見て、△8八角成▲同銀に△4五角と打ってしまうと▲7七角などとされ▲1一角成が受からないことに気付いた。なるほど、それを見越しての▲7六歩か。失礼しました。

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この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

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