あいかわらず「勝又教授のこれならわかる!最新戦法講義」が面白い

目次

将棋世界」2008年8月号、バカ売れ

将棋世界」2008年8月号は、「羽生善治十九世名人誕生!!」(参考:「将棋:名人戦第6局 羽生十九世名人に 森内に4勝2敗 - 毎日jp(毎日新聞)」)の記事の効果でよく売れたそうだ。普段将棋に特に詳しくない方も、記念に購入していた、とのこと。「特集!ハチワンダイバー」の記事もダブルで効果があったかもしれない。事実、私の友人で1人、後者の影響で久々に将棋世界を購入していた。

易しくなった「最新戦法講義」

「勝又教授のこれならわかる!最新戦法講義」についてネット上で話題を調べると、以前からよく「難しい」「わかりにくい」という意見が見受けられた。以前からそんな様子だから、今回「にわか」で購入した将棋に詳しくない方々にとって、8月号のこの講義はさも読み難かったに違いない。
・・・が、こうした読者層を予測していたのか、はたまた以前からの「難しい」という評価を汲み取っていたのか、8月号の講義はかなり簡単になっていたと思う。

まず、難しい用語が全然使われなくなってしまった。2008/06/15のエントリー『ゲーム理論から見た将棋(1)「振り飛車党相手に初手▲2六歩>▲7六歩の理由」』で紹介した「ナッシュ均衡」や「オーディブル・コール」、「バックワードフィネス」といった用語はどこへいったのやら、今回唯一の用語といえるものは「後出しジャンケン」くらいだったのではないだろうか(笑)。

さらに、副題で「第3回 振り飛車クロニクルの巻」(「クロニクル(chronicle)」とは年代記、歴史といった意味)と名付けられている通り、1900年代中盤までさかのぼって現在までの振り飛車の進化の歴史をじっくりと振り返っているので、最近の定跡を知らない方々にもわかりやすかったのではないだろうか。それにしても、前回、前々回の相居飛車角換わり系と異なり、居飛車VS振り飛車対抗系の講義は、性質上向かい飛車から中飛車まですべて網羅して一気に載せる形式となるため、勝又先生の気合の入れ方も半端ではないように見受けられた。

▲6五角問題

今回の講義のポイントは、「▲6五角問題」。記憶に新しい、2008/07/18に行なわれた第79期棋聖戦五番勝負第5局(羽生善治先生の角交換型向かい飛車)と、ごく最近2008/07/23,24に行なわれた第49期王位戦七番勝負第2局(羽生先生の2手目△3二飛)でも、この▲6五角が現れている。棋譜や解説は、下記等を参照下さい。

「▲6五角問題」という問題提起は、とても的を射たものだと思う。実際、最近の居飛車VS振り飛車対抗系は、これを巡る戦いと見ることができるかもしれない。「対イビアナ」という大命題に対し、角道を止めない振り飛車が主流を占める昨今、このサブドメインで共通して生じうる問題だからだ。なお「4手目△3三角」もこの問題の対抗策の1つとして含めたのも面白い視点で、やや目からウロコだった。詳しくは本誌を参照下さい。

講座の最後に『「▲6五角問題」への対応策』として、対応策と「カギを握る手」、対する居飛車側の指し方などを表にまとめている。上述した『ゲーム理論から見た将棋(1)』で、私は昔の講義に対して「表にまとめて載せたほうがわかりやすくて良い」と述べており、その意見が採用されたかのようでうれしかった。

羽生善治編」

8月号の最終ページをご覧になっただろうか。

将棋世界9月号予告
(中略)

勝又教授のこれならわかる!最新戦法講義・

法名が付くべきところに、まさかの個人名(笑)。期待を抱かざるを得ない。「破壊の神」の破壊の神たる所以が明らかされる。必読。

この記事を気に入ったらシェアしよう
URLをコピーする
URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

コメント

コメントする

目次
閉じる