続・いきなり三間

「いきなり三間」(2手目△3二飛戦法。別名「後手番猫だまし戦法」)をご存じない方は、下記の過去エントリーを参照下さい。

「週刊将棋」2008年3月5日号・12日号の「2手目3二飛ってなんだ?」を読んだ。解説手順については、「将棋世界」2008年4月号のほうが断然ボリュームが多いといえる。が、週刊将棋には、「被害者の証言」と題してこの戦法で負かされた阿久津六段と木村一基八段のインタビューが、またこの戦法の創始者である今泉健司三段のインタビューが紹介されていて、こちらはこちらで意義がある。

さて解説手順について、将棋世界にも載っておらず、疑問に残っている変化がある。△3二飛に対し、▲7五歩(第1図)とする順だ。先手の狙いは下記の通り。

(1)△8二銀(△7二銀だと角交換されるとまずい)には、▲2六歩〜▲2五歩〜▲2四歩。▲7五歩と壁銀の交換が入っている状態で、受け切れる?
(2)△5二金左には、(1)と同様▲2六歩〜▲2五歩〜▲2四歩。振り飛車側左辺が相当軽い形だが、受け切れる?▲2五歩のタイミングで角交換から△2二飛、と一手損して▲2四歩を未然に防ぐしかない?
(3)△6二玉には、▲7八飛。以下△3四歩には▲2二角成△同銀▲6五角△5四角(△6二玉でなく△3五歩と突いてあれば、ここで△3四角で後手良し)▲8三角成△8七角成▲7四歩△同歩(?)▲7三歩。△6二玉がはいっているため戦場が非常に近く、受けきれなそう。△3四歩の代わりに△5二金左のような手だと、▲7六飛(第2図)と浮かれ、▲2六飛(▲2三飛成の狙い)が非常に受けづらい。▲7六飛以下△3四歩には▲7七桂。この辺りの変化については、「猫だまし戦法講座 -第4章・第2節-」で似た形を詳しく紹介しているので、そちらを参照下さい。

(4)(2008/03/21追記)△3四歩(第3図)には、▲2二角成△同銀▲6五角△5四角▲8三角成△8七角成。以下じっと▲5六馬で、先手のほうが指しやすいか。ところでこの(4)の変化は、初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩と突く定跡形のときに△3二飛と回ったのと同じ局面である。このタイミングでの△3二飛は、定跡書でもプロの実戦でも見たことがない。相三間飛車を目指すならば△3五歩が正しい。△3二飛が指されないのは、①互角だが△3五歩のほうが無難で心配無用だからか、②角交換から▲6五角で後手悪くなるからか、理由は定かではない。①、②のいずれにせよ、この局面が現れたことがないというデータは、(4)△3四歩があまりいい手とはいえないことを暗に示しているといえそうだ。具体的な正しいとがめ方を知りたい。

▲7五歩対策の解説を待ちたい。

なお、私の調査した限りでは、本日(2008年3月12日)までにプロの公式戦で「いきなり三間」が現れたのは下記の5局(敬称略。対局者名は先手−後手の順)。
1.2007年12月 佐藤天−長岡 戦
2.2008年 1月 阿久津−長岡 戦 後手勝ち
3.2008年 1月 木村 −久保 戦 後手勝ち
4.2008年 2月 丸山 −羽生 戦
5.2008年 3月 伊奈 −遠山 戦 後手勝ち
6.2008年 3月 深浦 −森内 戦 後手勝ち (←2008/03/19追記)

★2008/03/19追記:
2008/03/09に行なわれた、「第17回北九州ハイビジョン将棋フェスティバル」というイベントにおける▲深浦康市王位VS△森内俊之名人の記念対局でも、「いきなり三間飛車」が指されていた。▲7六歩△3二飛▲9六歩△9四歩▲2六歩△6二玉▲2五歩△3四歩▲2二角成△同銀▲6五角△7四角▲4三角成△4七角成、という真っ向勝負(結果は後手・森内先生の勝ち!)。棋譜が下記サイトで参照可能なので、興味ある方は参考にされたし。

⇒ 「第17回北九州ハイビジョン将棋フェスティバル」

★2008/03/21追記:
2008/03/21のエントリーで、上記6つの対局を序盤のみ紹介(「フラ盤」を使用)したので、興味ある方はどうぞ。(なおブラウザ環境上フラ盤が表示されていない方は、「ひとくちメモ更新履歴 2008/03/21」のほうならば見られるかも)

この記事を気に入ったらシェアしよう
URLをコピーする
URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

コメント

コメントする

目次
閉じる