「梅田望夫氏の棋聖戦観戦記」の観戦記

2008/06/09のエントリー「オバフィフ(Over 50)層を、将棋に再注目させるには」にて、「梅田望夫氏(id:umedamochio)の棋聖戦観戦記の観戦記を書いてみる予定」と宣言していたわけだが、遅ればせながら形になった。
梅田氏の観戦記一覧は下記のページにまとめられている。もしご覧になっていなければ、私のエントリーなんて無視してそちらをご覧下さい。

→「梅田望夫 - コラム・オピニオン - MSN産経ニュース」

ポイントを3つに絞った。指し手に関する話は全くしていない。

目次

1.Web上の言論スペースは無限

私は前述の自分のエントリーの中で、観戦記に期待する内容について触れた後、最後に下記のように書いた。

これは私の個人的な意見。記事の分量、スペース的にそんな余裕はないだろう。実際どのような内容になるか、楽しみだ。

私は、愛読しているasahi.com:朝日オープン将棋観戦記一覧くらいの分量をイメージしてこのような発想となっていたわけだが、ふたを開けてみれば、「原稿用紙40枚に及ぶ観戦記」だった。Web上では文章の長さの制限が無い。それを思い知らされた。
例えば新聞等の将棋欄をWeb上に使いまわすと、分量や文章構成はそれらに最適化されたものになってしまう。対してWeb単独で考えると、

  • スペースは無限
  • 他の情報へのリンクを貼れる
  • 更新タイミングが任意

といった利点がある(自由度が高い、といえる)。逆に

  • 紙媒体のほうがじっくり鑑賞できる

といった欠点(感じ方は人それぞれか)がある。別物なのだから、紙媒体から使いまわすより元々Web掲載用に最適化した観戦記を書いたほうがいいものになるのは当然。もっと言ってしまえば、Web上のほうが書き手にとってはより力が出せる優れた土俵といえるのではないだろうか。
梅田氏の観戦記は完全にWeb向けに特化されていた。とはいっても普通の人は、無制限の容量が与えられていても原稿用紙40枚分も書こうとはしない(笑)。
Webと紙メディアの違いを体感したとともに、既成概念にとらわれていた自分に反省。2.に内容が重複してくるので、1.はここまでとしておく。

2.ターゲットと、「観る」楽しみ方の提案

前述の自分のエントリーの中で、下記のようにも書いた。

(Webの利用方法について、Over 50(50歳以上)層は)将棋関連情報収集に利用しているのだろうか。大手新聞社Webサイト内の棋戦情報や将棋関連サイトには訪れているのだろうか。(中略)
Over 50層の潜在将棋人口は少なくない、というか多いはず。

エントリーのタイトルからもわかる通り、私の視点は「以前将棋を趣味としていた熟年層を将棋に再注目させたい」というものだった。最近、団塊の世代が定年退職を迎えてきており、この層の「第2の人生」の動向が注目されている。余生にすごす趣味がまだ完全には定まっていないだろうこの方々に、ふたたび将棋に目を向けさせたい、と。

たがしかし、梅田氏の視野はもっと広かった。

一局の将棋には「無限の広がり」がある。その深さを堪能し尽くせるコアな将棋ファンばかりではなく、草野球をしない野球ファンがたくさん球場に足を運ぶように、もっともっとカジュアルに多くの人たちが、この素晴らしい将棋という頭脳スポーツの魅力を再認識してほしい。多様な「観る楽しみ方」を見出して楽しんでほしい、心からそう思うのだ。

http://sankei.jp.msn.com/culture/shogi/080611/shg0806111032001-n2.htm

全世代へ向けての観戦記だった。そして、将棋ファンだった人を呼び戻すだけでなく、新規ファン層の開拓へ。私にそんな発想は無かった。梅田氏の述べているように、渡辺明竜王の書籍「頭脳勝負」―将棋の世界 (ちくま新書 688)に同様の思想が語られているとのこと。感服した。

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具体的に将棋を「観る」楽しみ方の一例として、特定駒に注目、という方法を提案されており、参考になった。そこで私も、将棋を知らない方のための将棋を「観る」楽しみ方を、1つ考えてみた。ズバリ「戦前徹底予想」。
重要な対局の対局前に、対戦成績、最近の勝率、得意戦型、戦法のブームを徹底的に調べ上げる。かつ、それらを元にどの戦型になるかを予想し、関連棋譜一覧をピックアップ(先後の囲いの名称と飛車の位置を覚えておくだけで、初心者の方にも楽しく観てもらえると思う)。以上の情報を大々的にネット上で紹介し、対戦を煽る。スポーツもテレビ番組も映画も、今や事前のPR活動(PR放送)のほうが実際のコンテンツの放映時間より長くなってしまっている(本コンテンツの視聴率アップ狙いはもちろん、PR放送自体も結構な視聴率がとれるのでおいしい)ような有様。将棋界もこれをやってほしい。Web上にリーグ表やトーナメント表を載せているだけではあまい。ちなみに上記のような統計データ収集とサイトアップロード作業は、すべて自動化できるはず。

また、このような対局前に楽しめるコンテンツは、せんすぶろぐ(せんす氏)の2008/06/24のエントリーで述べられている

今週は実況中継のあるような大きな対局がなくてつまらないですね。将棋連盟さんは、もう少し繁閑格差の圧縮を考えられると、顧客満足度向上に資すると思います。

という不満を解消する1つの案となると思う。対局前に、戦前予想で盛り上がれると面白い。

2008/06/28追記

ネット上で調べていたら、「将棋の海外伝播などについてのブログ」様で取り上げられている「将棋関連の「Yahoo!ズバリ予想」に今年から将棋の予想が出されているようだ」という記事のおかげで、下記のようなサイトがあることを知った。

http://yosou.yahoo.co.jp/

ここで取り上げられるテーマ(お題)は、何でもあり。スポーツ系がメインのようだが、「ドラマの視聴率」、「6/30のダウ平均」(笑)など、予想できるものならば何でも取り上げられるようだ。例えば将棋の例でいくと下記の通り。

http://yosou.yahoo.co.jp/yoso.html?yoso=5548

投票数が異常に多い(数千人単位)のは、将棋ファンが多いというよりも「Yahoo!ズバリ予想」ユーザーはテーマを特に気にせず投票していくからであろう。お題として取り上げられ、多くの票を得たからといって、ユーザーの記憶にとどまるのか、長い目で見て将棋界として効果が期待できるのかを考えると、疑問が残る。
本当は、このような投票もできるコミュニティを、将棋連盟が持つことが望ましい。もしくはこのような大手サイトと提携関係を結び、上記のようなデータを提供することで、将棋界の普及につながるとともに予想側はより予想を練る(その結果記憶にも定着する)楽しみが増えるはずだ。
−−−2008/06/28追記ここまで−−−

3.孤高の脳

最後に、「孤高の脳」。「学習の高速道路」とその先の「大渋滞」「けもの道」などに続くキーワードの登場である。

対局室と控室を行ったり来たりしていると、自らの脳だけを信じ、衆人環視のなか苦吟する、両対局者の「孤高の脳」にあらためて感動を覚える。

http://sankei.jp.msn.com/culture/shogi/080611/shg0806111638004-n2.htm

静寂の対局室と、対局内容の研究が活発に行われる控室。その二つを往復しながら私は、自らの脳だけを信じ、衆人環視のなか苦吟する両対局者の孤独な営為に深い感動を覚えた。

http://sankei.jp.msn.com/culture/shogi/080621/shg0806210815000-n1.htm

既出の2つが「棋士発(それぞれ羽生・佐藤両先生)・梅田氏咀嚼のWeb啓蒙用語」に昇華したのに対し、今回のキーワードは「棋士インスパイア系・梅田氏発の棋士(人間)啓蒙用語」といったところか。良し悪しの問題ではないが、Web系への応用的な用例が難しいので、今回のキーワードは爆発的には普及はしないかもしれない。

ところで、「孤高」を辞書で引くと、下記のように説明されていた。

ただひとり、他とかけ離れて高い境地にいること。
「―の精神」「―を持する」

三省堂提供「大辞林 第二版」より

前述の通り、対局者2人は「孤独な営為」を営んでいる。極限の高みにある「孤独」を「孤高」と解釈してよいだろう。

ふと、私が思い浮かべた脳内2次元グラフは、

  • 縦軸:下が普通の人間で上に向かうにしたがい孤高の存在へ
  • 横軸:人間の数。ゼロにいれば孤独(1人)。右に向かうにしたがい交流する人間が増えていく

というもの。

人間は、「孤独」な状態から「孤高」を目指し、ひたすら上のベクトルへ進んでいける生物なのか?それは無理。左右へ寄り道し、他人と関わり合い、影響を受け学習しながら、上への推進力を得ていく。上へ向かうプロセスや方法論。それが体系化されていれば、いくらお金払ってでも勉強するんだがなぁ。

ふたたび、「大事件並み」のニュース勃発に期待

今回の梅田氏の観戦記は、「大事件のニュース並み」の反響だったとのこと。羽生永世名人のニュースも、当然一般紙を駆け巡った。これらに続く大ニュースに期待したい。「先日の秋葉原通り魔事件の容疑者は将棋部に所属したことがあった」、みたいなニュースは不要だ(苦笑)。

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この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

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