ボナンザクローンが将棋の神様となる日は来るのか

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保木邦仁氏、ボナンザのソースファイル一式を公開

2009年1月、コンピュータ将棋界に衝撃が走った。今さら説明は不要だろう、あの「ボナンザ」のソースファイル一式が公開された。

第19回コンピュータ将棋選手権使用可能ライブラリ
  開発者名 : 保木邦仁
  ライブラリ名 : Bonanza Version 4.0.3

コンピュータ将棋作者の方々の間でも、大いに話題になっている。とりわけ、「ボナンザライブラリのどこに/どれだけ手を加えれば、オリジナリティが認められるのか」、という点が注目されているようだ。

読ませていただいた感想としては、「ボナンザライブラリを利用する人はあまり現れず、コンピュータ将棋選手権にボナンザクローンが乱立することは無さそう」という感触を抱いた。

「コンピュータ将棋 世界最強決定戦 2009」開催

19日、20日に、下記の大会が行われるようだ。

2009年2月19日午前9時半開始!! 動画中継も行います
  19日 9:30-16:00頃
  20日 9:30-12:00頃

参加チーム:
過去2年間主要な大会で優勝したソフト4チームによる戦い。4チームに満たない場合はそれに準ずる成績を上げたソフト

  • 激指 (前回優勝,2008年世界コンピュータ将棋選手権優勝)
  • YSS (前回優勝,2007年世界コンピュータ将棋選手権優勝)
  • TACOS (2008年 Computer Olympiad 優勝, 2007年 Computer Olympiad 優勝)
  • 棚瀬将棋 (2008年世界コンピュータ将棋選手権準優勝,2007年世界コンピュータ将棋選手権準優勝)

この大会は、上記4チームだけの参加のようだ。実績のあるこれらのチームが、まさか土台からボナンザライブラリを適用することはあるまい。しかし参考となる(そして組み込んだ?)アルゴリズムは多少はあるかもしれない。
ボナンザクローンの活躍、という視点では面白みは無いが、いずれにせよ、今やトップアマを凌駕する力を付けたコンピュータ将棋の頂上決戦の大会。要注目といえる。

コンピュータ将棋が将棋の神様となる日

ブログのタイトルにしているほど、私は「将棋の神様」という言葉が気に入っているし、メディア媒体に登場すると敏感に反応してしまう。
保木氏は、書籍「ボナンザVS勝負脳」の中で、この言葉を使っている。

 常に「勝つ」ためには、その指し手はプロ棋士の常識をも覆さなければならない。間違い方に個性が出ると言ったが、その間違いが、ただの間違いではなく、プロ棋士には間違いだと思われるような人間の理解を超えた手であることが必要なのだ。
 ただ、ボナンザはまだその域には達していない。内心思っていたレベルにはまだいない。発展途上なのだ。ただいつの日か、それはボナンザという名前ではないかもしれないが、将棋の神様と呼ばれるコンピュータ将棋が生まれるものと私は信じている。

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この文章を書いているとき、保木氏がライブラリ公開をイメージしていたかどうかはわからない。「ボナンザという名前ではないかもしれない」の文章に、「ボナンザの頭脳(アルゴリズム)が吹き込まれているだろうか」という裏の意味が込められていたかどうかはわからない。
とにかく、賽は投げられた。コンピュータ将棋は、人類の叡知を結集して「将棋の神様」を目指していくフェーズに入った、といえるかもしれない。

「将棋の神様に認められた」深浦康市王位

ところで、「将棋の神様」は強いだけで冷徹な存在ではない。ユーモアがあり、人間の将棋界を意のままに操っているのかもしれない。

将棋の第49期王位戦中日新聞社主催)を制した深浦康市王位の就位式が5日、東京・日比谷の「松本楼」で開かれた。深浦王位は羽生善治名人の挑戦を4勝3敗で退け、初防衛に成功した。(中略)
深浦王位は「故郷の佐世保で勝つなど、思い出に残る7番勝負でした。2期連続で羽生名人に勝てたことで、将棋の神様に王位と認められた気がした」と喜びを語った。

人間が、コンピュータがいくら追いかけても、将棋の神様にはまだまだ、もしくは永遠に余裕がある。勝負の行方も意のままだ。
一番のお気に入りは羽生善治名人なのだろうか。昨年の竜王戦では試練を与え、「永世竜王獲得」という課題を残させた。まるで、エースに最も厳しく指導するコーチであるかのように。

神様がコンピュータに与えし永遠の試練、「序盤戦術」。これが解消されるのは、果たしていつの日か。

2009/02/16追記

コンピュータ将棋作者の方々の関連エントリー数件を追加。
なおタイトルについて、「ボナンザクローン」と呼ぶより、親子関係の意味を含む「ボナンザチルドレン」と呼んだ方がしっくりくるかも。例えばshogitygooさんは後者で呼んでいる。

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この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

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