「久保棋王」
久保先生にタイトルを付ける呼び名は、聞きなれていないせいでまだ違和感がある。
「佐藤九段」
どの「佐藤」でもない、紛れもなく、あの「佐藤康光」九段だ(他の「佐藤」先生、ごめんなさい)。7年ぶりの無冠。こちらも違和感がある*1。
久保は兵庫県加古川市出身で、93年にプロ入り。01年の棋王戦と王座戦では羽生善治棋王・王座に敗れた。07年の王座戦、08年の王将戦でも羽生に敗退。だが、5回目のタイトル挑戦となる今回は、佐藤に競り勝った。
順位戦ではA級に5期在籍し、現在はB級1組。華麗な振り飛車を指すことから「さばきのアーティスト」と呼ばれる。
これまでのタイトル戦挑戦では、すべて羽生名人(現在)に挑み続け、すべて敗退。久保棋王は羽生名人と非常に相性が悪く*2、大きく負け越している。今回ようやく別の棋士とタイトル戦を戦い、見事棋王位を勝ち取った。本当におめでとうございます。
升田幸三賞も獲得
今年度の久保棋王は、ゴキゲン中飛車と先手石田流、そして裏芸として2手目△3二飛戦法で勝ちまくった。升田幸三賞をはじめとして、数多くの賞も獲得。
将棋の棋戦主催各社で構成する「第36回将棋大賞選考委員会」が31日、東京都渋谷区の将棋会館で開かれ、永世名人称号獲得などで活躍した羽生善治4冠(名人・棋聖・王座・王将)が最優秀棋士賞に選ばれた。2年連続16度目。
(以下、久保棋王に関連する賞のみ抜粋)
▽敢闘賞 久保利明棋王
▽最多対局賞 久保棋王(73局)
▽最多勝利賞 久保棋王(49勝)
▽升田幸三賞 久保棋王(第34期棋王戦第2局の7五飛)
なんとも目覚しい活躍。このうち「第34期棋王戦第2局の7五飛」は、つい先日行われた一局で現れた、記憶に新しい久保新手だ。詳しくは「石田流のハメ手の落とし穴」などをご参照下さい。
これからも、当面はゴキゲン中飛車がエースの戦法となるだろうが、石田流やノーマル三間飛車、そして裏芸2手目△3二飛を採用し続けることを期待したい。
第77期棋聖戦との違い
この棋王戦は、鈴木大介八段と佐藤康光棋聖の間で行われた第77期棋聖戦と似ているな、と思って見ていた。同様に考えていた方は多かっただろう。
「先手番では石田流、後手番ではゴキゲン中飛車」と宣言して挑んだ鈴木八段と、何も宣言せず(これが普通)、本棋戦第4局では予想外の先手四間飛車を用いた久保先生。結果的に四間飛車を用いた一戦では敗れているわけだが、「相手に的を絞らせない」というのは事前の研究の面でもメンタル面でも相手への影響は大きいだろう。
とはいえ鈴木八段は、3連敗したものの、2局目、3局目ではむしろ中盤まで鈴木先生良しだった。堂々と宣言することは、鈴木八段の将棋感ともマッチしており、本人は気分良く指せたのだろう。
「理外の理」。
このような将棋の難しさ、奥深さを感じることも、なんとも心地良い。
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