将棋に学ぶタイムマネジメント、3つのポイント
先日、将棋における時間の使い方を参考に、タイムマネジメントのポイントを指南した記事が紹介されていた。
・知識の力で、時間を節約する
・完璧を目指したり、考えすぎたりして、時間を浪費しない
・重要なプロセスに、時間を使えるようにしておく
これらは、いずれもビジネスの時間管理術に通じるところがあります。経験や学びを蓄積・共有することにより短時間で準備ができる、考えすぎや完璧主義を廃し、時間を切って仕事を仕上げるようにする、結果として本当に重要な課題に十分に時間を使うことができるようになるということです。
上記3つのポイントに集約されていて、とてもわかりやすいし、参考になった。
唯一、いち将棋ファンとして
知識の力で、時間を節約する
と簡潔に纏められてしまっているところに食指が動いた。
実際には、将棋における持ち時間の使い方はもっと深い。ときに将棋指しは論理的でない行動をとるのだ。これについて少し述べておこう。
「将棋に学ぶタイムマネジメント」からの還流のおかげで、将棋について客観的に再勉強できたので、それに敬意を評し、本エントリーのタイトルを『「将棋に学ぶタイムマネジメント」に学ぶ将棋』とした。
事前研究していても長考する
知っているのだから時間を使わなくても、確認程度で済むので早い対応ができます。知識の力で時間を節約し、大切なところだけじっくりと腰を落として考えることができます。
一般的にはまさにその通りなのだが、そうでないケースもある。事前研究通りで知っている局面であっても、じっくり手を進めたり、長考が大好きな将棋指しも大勢いる。研究通りの局面で、5時間を越える長考をした棋士もいる(以下参照。ただし、うっかり事前研究で不利と断定した局面になってしまったというオチが付いている)。
昨日(2005/09/02)行われた順位戦B級1組▲青野照市九段 対△堀口一史座七段の対局で、堀口一史座七段が5時間を超える記録的な大長考をしたそうです。順位戦の持ち時間は6時間ですから、1手指すのに持ち時間の大半を投入したわけです。それが功を奏したのか、見事に堀口一史座七段がこの対局を制しました。
初手にも長考する
極端な話、初手に数分使うケースもある。集中力を高めるためだったり、相手の手に応じて指す戦型を再確認するためだったりと理由はあっても、そこまで使うか、というケースもある。
これを参考にし、ごく普通のサラリーマンが、就業時間が始まってからデスクで数分間集中力を高めるために瞑想していたら、頭を叩かれそうだ。いや、最近のご時勢だと各自の裁量に任せる風潮があるので、スルーされる職場のほうが一般的か。
サンクコストにはならない
まさに「実戦は生き物」だ。もしくは、「実戦」という魔物を目の前にして臆した人間がとった非論理的な行動、と表現してみるのも面白いかもしれない。
ただし私は、一見無意味に見える「事前研究済みの局面、および初手における長考」は、決して無駄でないと思っている。「実戦」という真剣の場で考えた内容は、例え事前検討と重複していてもその記憶定着度が格段に高いと考える。また初期局面における長考も、集中力を鍛える上で大いに役に立っているだろう。
将棋はマラソンである、と羽生名人がよく語る(2009/03/25のエントリー「将棋とマラソンの類似点」参照)通り、将棋はそれ1局で終わりではない。これら非論理的な長考は、明日以降待っている別の将棋に、気付かぬうちに役に立っているはずだ。たとえその対局の結果に結びつかなくても、将棋で持ち時間を使うことはサンクコストにはならない。
ただし悪手の後悔に時間を使うのは効率が悪い。局後の感想戦や事後検討で行えばよいだろう。
改めて、名文
「将棋に学ぶタイムマネジメント」には、他にも少し指摘したい点が含まれているが、ちょっとした言葉尻をとらえた揚げ足取りのような内容なので止めておく。
やはり改めて、元の記事の完成度が高かったということだ。勉強になった。たまに読み返してみるのもよいかもしれない。
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