「鈴木大介の将棋 三間飛車編」書評(2)「対居飛車穴熊」

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後手番三間飛車で居飛穴攻略

『「鈴木大介の将棋 三間飛車編」書評(1)「対急戦」』に続いては、「対居飛車穴熊」。
書評(1)でも紹介した通り、書籍の帯に

対穴熊には5筋からのと金攻め

と書いてあるわけだが、コーヤン流における中央志向とは少しアプローチの仕方が違う。

すなわち、三間飛車側を後手として、コーヤン流のように△4五歩と突いて3三にいる角で中央および居飛車穴熊をにらみ倒す*1わけではない。

△4五歩と突かず、△5一角と引く

本書における鈴木流の骨子は、「△4五歩と突かず、△5一角と引く」ことだ(第1図)。
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以下、

  1. △8四角
  2. △5五歩〜△5六歩
  3. △5二飛
  4. △3三桂〜△4五桂(△4五歩保留の効果)

の4つを、居飛車側の構想にあわせて手順を凝らして組み合わせることで、「5七の地点」を集中放火する。

この強烈な集中砲火にも、書評(1)で名付けた「パワー三間飛車」という名称が当てはまると言えそうだ。

また、△7三桂と跳ねると角が8四に上がれなくなり、また自玉の堅さも落ちるため、特定の条件を除き(詳細は書籍参照)跳ねないようにする。

2筋方面を焦土化

本構想はすべてが新構想というわけではなく、第1図は私自身2003年に「VS居飛穴&持久戦のひとくちメモ -PAGE3-」のMEMO9で紹介している。なおそこでは、本構想が実戦で現れた第57期A級順位戦、▲谷川浩司VS△森内俊之戦(敬称・段位略)も紹介している。

また、「三間飛車道場〈第1巻〉居飛穴VS5三銀」(所司和晴七段 著)にも第1図以下の戦いが少し載っている。

ただし本書「鈴木大介の将棋 三間飛車編」には、第1図以下の戦いが深く広く載っている。

もちろん、第1図のような居飛車側の布陣以外で△5一角と引く形も紹介されており、これらは初めて見た。具体的には、居飛穴側が金の移動はほどほどに▲4六銀から急戦調で来た場合は、△6四銀まで上がるのが間に合わない代わりに、△5一角から△7三角とし、2八の飛車をけん制するような構想だ(第2図)。
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本書には以下のような鈴木八段の言葉がある。

2筋方面を焦土化して攻めを狙う指し方は三間飛車ならではといえる。

この言葉が、すべての構想を集約しているといえよう。

「天敵」対策が載っていない、が

ただし本書には、致命的といえるかもしれない欠点がある。

それは、現在三間飛車にとって「天敵」とされる、居飛穴側が金の移動はほどほどに早めに▲6八角(後手番では△4二角)と引く形(第3図)*2に対する対策が載っていないことだ。
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本書購入前、目次に「居飛車穴熊▲5七銀保留型」とあったので、てっきりここでこの形が紹介されるのかと思っていたら、▲5七銀は保留するものの2枚金をしっかり7九と7八に移動してから▲6八角と引く、旧式の形だった。

ただ、「天敵」に対しても△5一角型が通用するのかは本書でははっきりしないものの、本書で学んだ△5一角型および手筋群を「天敵」相手に試してみて、△5一角型の長所・短所を把握し経験値を貯めてみるのもよいと思う。

左美濃は死んでいない

もともと、この書評(2)は「対持久戦」と名付け、ここで本書のレビューを終了するつもりだった。

が、「対居飛穴」だけで長くなってしまったので、「対左美濃」のレビューは書評(3)としてまた次回、としよう。

*1:「最新戦法の話」(勝又清和六段 著)第8講「コーヤン流の話」に、『「振り飛車の長所は?」と聞かれたら、私は真っ先に「角が敵陣をにらんでいることだ」と答えます。だからコーヤン流は角に頑張ってもらうための戦法なんです。』という中田功七段のコメントが載っている。

*2:詳しくは、「最新戦法の話」「VS居飛穴&持久戦のひとくちメモ -予備知識-」その4「△6二銀・△4二角型」などを参照下さい。

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この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

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