「鈴木大介の将棋 三間飛車編」書評(3)「対左美濃」

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コーヤン流の必殺手順は成立せず

書評(1)「対急戦」書評(2)「対居飛車穴熊」に続き、いよいよ最後の書評(3)「対左美濃」。

鈴木 大介 (著) 発売日:2009/4/24

「コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編」(中田功七段 著)をご覧になった方々はご存知の通り、先手三間飛車VS後手4枚美濃の戦型では、「対四枚美濃版コーヤン流」の必殺手順が存在する(第1図)*1

【第1図は55手目▲2三角まで】
後手の持駒:飛 銀 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v銀 ・ ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩v銀 角 ・|三
| ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩v歩|四
| ・v飛 ・ 歩 角 歩v玉 ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩vと ・ ・ ・ 金 ・ 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩二 
手数=55 ▲2三角まで

これと同じ手順が、参考手順として本書「鈴木大介の将棋 三間飛車編」にも載っている。

しかし、本書は後手番三間飛車の戦い方を標榜する本だ。後手番では、一手の遅れにより残念ながらこの必殺手順が成立しない。華麗なさばきは無理。

「パワー三間」で押さえ込む

代わりに、「泥臭い」とも表現できそうな、左銀を活用した力ずくの押さえ込み構想が披露されている。くどいようだが、これぞまさしく「パワー三間飛車」という呼び名が相応しい。

左銀以外の急所は、書評(2)「対居飛穴」と同様、△5一角。象徴的なのが第2図(P188)だ。

【第2図は42手目△3三桂まで】
後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v角 ・ ・ ・v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・v飛 ・ ・|二
| ・v歩 ・v金 ・ ・v桂 ・v歩|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v銀v歩 角 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・|五
| 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| ・ 玉 銀 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 銀 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=42 △3三桂まで

本書では、対四枚美濃だけでなく、対三枚美濃の戦い方も解説されている。「コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編」では対三枚美濃の解説ページ数は比較的少なく、他に対左美濃の三間飛車本はおそらく存在しない(居飛車寄りの棋書であれば「羽生の頭脳 (4) 居飛車穴熊と左美濃」(羽生善治名人 著)などが挙げられる)ため、本書の解説は貴重だと思う。

ノーマル三間飛車党必読の良著

本書は、総じて内容が濃く、ためになる良著だと思う。ノーマル三間飛車*2党の方々は必読だろう。

対急戦には「コーヤン流」と「鈴木流パワー三間」の二刀流を駆使し、対持久戦では数多くの対策にさらにパワー三間を追加して、自分の土俵で戦おう。

また、急戦編には角交換振り飛車にも似た力強い戦い方が載っているので、力戦振り飛車党の方々にも参考になるかもしれない。

*1:第1図以下、△2三同銀▲4六金△2五玉▲3三角成!で必死。第1図までの指し手は、是非本書を読んでチェックしていただきたい。流麗かつ超絶の手順。コーヤン流の本手順を知って三間飛車党を目指したファンも多いことだろう。

*2:序盤早々▲6六歩(△4四歩)と角道を止める三間飛車の俗称。

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この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

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