形勢判断2

前日の日記
形勢判断」を改めて読んでみて、その大勘違いさに気付いた。いかにも人間の発想らしい、俗な理論であった。以下に訂正する。
コンピュータや人間は「読みの深度」に限界がある。例えば参考図。ここで手筋の▲3三歩があるので先手有利。具体的には以下、△同角▲2一飛成△2二飛▲同竜△同角▲2四飛くらいだろうか。・・・さて、強い人なら具体的な手順を上げ、もっと先まで読むだろうが、人間や現在のコンピュータは読みの深度に限界があるため、いずれ「その先は全く読まない、静止画としてとらえる局面」が現れる(駒のぶつかり合いが無くなった局面が大抵それにあたる)。そこでの形勢判断の仕方として、駒の損得や駒配置の効率を用いるのである。人間の場合はこれを「大局観」と呼び、コンピュータの場合は「評価関数による数値化」となる。
神の形勢判断はこれとは本質的に違う。迎えた静止局面での駒の損得やスピードなどで決めるものではない。そう、「究極の具体的手順」、すなわち詰みまで読みきってから形勢判断をするのである。したがって参考図のような局面から、天文学的な変化をすべて読みきり、「最長で(王手ラッシュによる水平線効果などもすべて考慮し)あと62手(仮)で勝ち(詰み)」、とした上で、いよいよ良し悪しの形勢判断を下すのである。なお「どのくらい優勢か」を決定付けるのは難しく、「次善手の多さ」や「間違いにくさ」などによりそれなりに判断できよう。とはいえこの「優勢度」というのは人間や現在のコンピュータのためにある言葉であり、すべて読みきっている神にとってはその局面が勝ちか負けかあるいは千日手か、デジタルに言えば1か0かNULL(ヌル)かしかなく、優勢度もへったくれも無い。
「局面」ではなく「読み」による優勢度評価の1つの評価基準として、
(優勢を保てる着手数)/(その局面における可能着手数)
が高ければ高いほど優勢という方法が挙げられる。これが高いほど間違いにくいことになる(これはあくまでもひとつの評価例。「次の一手」問題においては、解答手が1つしかなくこれを逃すと大抵必敗になる問題が多いが、問題図が先手優勢であることには間違いない。これについてはまた後日)。
さて、優勢を保てる着手数がいくつあるのかを知るには、1手指した先の局面でも同様のしらみつぶしの読みを行なわなければならない。その先も同様。最終的にすべての変化において詰みまで読まなくてはならないので、まさに天文学的な読み。「1億と3手」くらいでは到底およばない。詰みまでの手数は変化により当然違い、読みの深度は当然∞(無限大)。
ちなみにコンピュータ将棋では、読みのアルゴリズム帰納法で行なっているようだが、上記のように考えれば納得がいく。ただし読みの深度に限界がある。人間の場合は、読みの深度をその局面の重要度(例えば、大優勢と即断できるような変化はあまり先まで読まない)に合わせてファジーに変化させている(最近のコンピュータ将棋でも同様の工夫が行なわれている)。

荒唐無稽な話だ、と思われるかもしれないが、最終盤に限れば、アマチュアの皆さんでも普通に行なっている話である。例えば詰み手順中、後何手で終了かがわかるはず。その局面におけるすべての変化を読み切ることが可能なのだ。応用としては、あと何手で必死がかかる、と読みきることも同様である(必死を読みきっているということは、最後まで見えているということ)。必死をかけるまでにはまた膨大な変化を要するかもしれないが、人間は幸いにも、一気に形勢が離れてしまうような明らかな悪手は本能的に読みから外しているが、神はどうでもいいような局面をすべて読みきっている。

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この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

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