コーヤン流の必殺手順は成立せず
書評(1)「対急戦」、書評(2)「対居飛車穴熊」に続き、いよいよ最後の書評(3)「対左美濃」。
「コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編」(中田功七段 著)をご覧になった方々はご存知の通り、先手三間飛車VS後手4枚美濃の戦型では、「対四枚美濃版コーヤン流」の必殺手順が存在する(第1図)*1。
これと同じ手順が、参考手順として本書「鈴木大介の将棋 三間飛車編」にも載っている。
しかし、本書は後手番三間飛車の戦い方を標榜する本だ。後手番では、一手の遅れにより残念ながらこの必殺手順が成立しない。華麗なさばきは無理。
「パワー三間」で押さえ込む
代わりに、「泥臭い」とも表現できそうな、左銀を活用した力ずくの押さえ込み構想が披露されている。くどいようだが、これぞまさしく「パワー三間飛車」という呼び名が相応しい。
左銀以外の急所は、書評(2)「対居飛穴」と同様、△5一角。象徴的なのが第2図(P188)だ。
本書では、対四枚美濃だけでなく、対三枚美濃の戦い方も解説されている。「コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編」では対三枚美濃の解説ページ数は比較的少なく、他に対左美濃の三間飛車本はおそらく存在しない(居飛車寄りの棋書であれば「羽生の頭脳 (4) 居飛車穴熊と左美濃」(羽生善治名人 著)などが挙げられる)ため、本書の解説は貴重だと思う。
ノーマル三間飛車党必読の良著
本書は、総じて内容が濃く、ためになる良著だと思う。ノーマル三間飛車*2党の方々は必読だろう。
対急戦には「コーヤン流」と「鈴木流パワー三間」の二刀流を駆使し、対持久戦では数多くの対策にさらにパワー三間を追加して、自分の土俵で戦おう。
また、急戦編には角交換振り飛車にも似た力強い戦い方が載っているので、力戦振り飛車党の方々にも参考になるかもしれない。
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