第2局・ひねり飛車で快勝
既報の通り、昨日行われた新人王戦三番勝負第2局で、広瀬章人五段が中村太地四段に勝利。対戦成績を2−0とし、優勝した。
第1局は、先手・中村四段の居飛車穴熊VS後手・広瀬五段の四間飛車穴熊。非常に見ごたえのある将棋だったが、四間飛車ということで本ブログではスルーした。
そして第2局、先手番を持った広瀬五段は、意表のひねり飛車戦法を採用。もっとも、5手目の▲2五歩に対し、中村四段が△8八角成と一手損角換わり志向で進めていたら全然別の将棋となっていただろう(一手損角換わりか、角交換型振り飛車か)。
2009/10/15追記
広瀬五段のブログで、新人王戦第2局と対局後の様子が取り上げられているのでご紹介しておく。
今回は先後があらかじめ決まっていたので、居飛車で行く予定でした。結局あまりみないひねり飛車の将棋になり、昔を思い出しながら指すといった感じでした。
中盤でもう少し駒組みが続くかな、と思っていたら中村四段に強気に呼び込まれたのでこちらも強気に応戦、突如戦いになりました。
(追記ここまで)
2008/12/17のエントリーで述べているように、私は学生時代は生粋の居飛車党で、しかも先手番を持ったときは初手▲2六歩と突いて相掛かり系の将棋を好むタイプだった。そのためひねり飛車の実戦経験も結構あったので、本局の序中盤戦を見て、懐かしく思いながら楽しむことができた(もちろん終盤戦も。あの「光速の寄せ」には驚いた・・・。)
変形ひねり飛車
とはいえ、本局のように左辺の金銀が上がらないひねり飛車の導入(第1図)は、私はたぶん一度も指したことがない。古くから存在する構想らしいが、はじめて見た気がする(忘れているだけかもしれない)。
普通に▲7八金と上がってからひねり飛車を目指す将棋(参考1図)か、▲7八金と上がらずに▲9六歩(参考2図)として▲7八銀型ひねり飛車*1を目指す将棋しか指したことがない。
本譜の構想では、左辺の形を決めるのを後回しにして玉形の整備をさっさとすませることができ、また▲7八金型に比べて一手で▲5八金と美濃囲いを完成させることができるので、通常のひねり飛車に比べて相当得な戦いに見える。ただし後手に乱戦・急戦を狙われるリスクが高いといえる(これは▲7八銀型にも当てはまりそう)。
通常の石田流との違い
さて、本譜は第2図のように進むのだが、ここまでくると「なぜか2七の歩が無い変な石田流」に見えてしまう方もいらっしゃるかもしれない。
中盤戦の先手の方針は、「2筋の歩を手持ちにしていることを活かした攻めをし、また、2筋の歩が無いことが傷にならないような戦い方をする。」ということになる。例えばのんびりしていて△2五歩〜△2六歩と突かれると玉頭の傷になりかねない(もしくは不本意な流れで▲2七歩と打たされては何をやっているのかわからない)。
通常の石田流との違いとして、1歩を手持ちにしている点以外に、手が遅れている点が挙げられる。通常の石田流から双方手損なく第2図に似た変化に進めると、参考3図のようになる。
後手陣は全く同じ布陣だが、このとき先手側は▲2八玉と▲5六銀の2手の違いが生じていることがわかる。すなわち、▲2六歩〜▲2五歩の2手分だ。なお、▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2六飛までは1セットなので、都合1手(2六に飛車を浮きつつ2五の歩を駒台に移動、という1手)とカウントすることができ、飛車の動きに関しては▲7八飛〜▲7六飛と▲2六飛〜▲7六飛の違いなので手損は生じていない。
三間飛車党にひねり飛車が指せるか
第2図と参考3図の差をどう見るか。もしあなたが、参考3図よりも第2図のほうが攻め味があって(持駒に歩があるので垂らしなどが狙える)指してみたい、と思うのならば、この形を狙ってみるのもいいかもしれない。もしくは、普通に▲7八金型or▲7八銀型ひねり飛車を指してみるも面白いかもしれない。
が、普通の相居飛車戦か居飛車VS振り飛車対抗形(持つのは居飛車側)になるリスクが非常に高い。
「居飛車側を持ってもよい」という覚悟がないと、三間飛車党に、いや三間飛車党に限らず振り飛車党にひねり飛車はまず指せないと言ってよいだろう。
*1:「相掛かり・ヒネリ飛車 @将棋 棋書ミシュラン!」様で紹介されている相掛かり系棋書のうち、私は当時「相掛かりガイド1、2」、「羽生の頭脳8」、「ひねり飛車の基礎知識」、「一閃!森流ヒネリ飛車」を所有していた(すべて処分してしまった)が、▲7八銀型が載っているのはこのうちたしか「ひねり飛車の基礎知識」だけだったと思う。やはり所司和晴先生の定跡書は手広くて手厚い。興味のある方はご参照あれ。
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