振り飛車穴熊の栄枯盛衰

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広瀬章人新王位誕生

第51期王位戦第6局にて、挑戦者・広瀬章人六段が深浦康市王位に勝利し、通算成績を4勝2敗として王位を奪取した。お見事。

広瀬流四間飛車穴熊

今回のタイトル戦ではじめて知った(私の情報収集が遅かったか)のが、「広瀬流」と呼ばれる四間飛車穴熊の布陣(第1図)。▲4五歩と突いて△3三銀と引かせた後、▲4七銀と引いて▲5六歩〜▲5五歩と5筋を狙う指し回しだ。
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本タイトル戦では、相穴熊の戦いが実に目立った。これを期に、昔ながらの振り飛車穴熊VS居飛車穴熊の戦いの歴史をほんの少しだけ振り返ってみたい。

振り飛車穴熊VS居飛車穴熊 極小史

古くは大内延介九段(今年引退)や福崎文吾九段が振り飛車穴熊党として有名だ。振り飛車穴熊の棋書も執筆している。

大内 延介 (著), 週刊将棋 (編集) 発売日:1994/11/1
福崎 文吾 (著) 発売日:2002/11/1

居飛車穴熊VS振り飛車穴熊と聞いて私が真っ先に思い浮かぶのは、第2図のように振り飛車側が(振り飛車側を後手として)6筋に飛車を転換して攻めていく形。実際この図は1999年発売の「これが最前線だ!【最新定跡完全ガイド】」(深浦康市九段著)のテーマ17になっていて、当時プロ棋戦でもアマ棋戦でも結構見られた戦型だったと思う。なお同書籍のテーマ16も居飛車穴熊VS振り飛車穴熊だ。
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次いで2003年発売の「最前線物語」(深浦九段著)では、居飛車穴熊VS端歩位取り穴熊がテーマ17(第3図はテーマ17から少し進んだ一例)として取り上げられたものの、振り飛車側から見て成績は芳しくなかったようで定着せず、ついには2006年発売の「最前線物語2」(深浦九段著)、そして2007年発売の「最新戦法の話」(勝又清和六段著)では相穴熊がテーマ図として取り上げられることはなかった。
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深浦 康市 (著) 発売日:1999/4/1

「四間飛車道場(東大将棋ブックス)」シリーズで振り飛車穴熊が解説されていたのも、やはり2000年前半にまで遡る。

「相穴熊戦は居飛穴優位」と言われ、振り飛車穴熊の使い手が現れていなかった昨今、振り飛車穴熊を駆使して王位を獲得したのが広瀬新王位なのだ。だが、居飛穴優位の論調はまだ大分強いような気がする。

現在、居飛車穴熊VS「ゴキゲン中飛車+穴熊」、いわゆる「ゴキゲン穴熊」の戦いはよく見られるが、ノーマル振り飛車穴熊はまだまだこれから。広瀬王位とアマ強豪・遠藤 正樹氏の共著「とっておきの相穴熊」は、相穴熊の特定の戦型の序盤研究ではなく、相穴熊を指す上でのコツや急所を解説した戦術書だった。

はたしてこの「広瀬流」が本人の手によって書籍化されるだろうか。書籍化されれば、プロ棋界はともかく、アマ棋界では振り飛車穴熊が流行することになるだろう。

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この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

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