竜王戦の余波
いまだ記憶に新しい、第21期竜王戦。将棋界史上初の「タイトル戦七番勝負にて、3連敗後の4連勝」を成し遂げ、渡辺明竜王が羽生善治名人の挑戦を退けて初代永世竜王の称号を得たシリーズだ。
本シリーズは戦前、渡辺竜王得意の穴熊戦法に注目が集まり、本ブログでも『第21期竜王戦第1局に見る、「穴熊のパンツ」と「ゼット」の関係』として取り上げたわけだが、結果的には穴熊は第1局でしか現れなかった。
しかし、この渾身のエントリーを書き上げた余波は、いまだ私の中に残っているのかもしれない。以降私は穴熊戦の将棋を観ていて、穴熊のパンツ(王様の隣の桂馬)の動向が必要以上に気にかかるようになってしまった気がする。そして12月頭には『「将棋世界」2009年1月号に、「パンツ剥ぎの名局」の自戦記』というエントリーを書いた。パンツ剥ぎの大技を見せたのは、現在進行中のNHK杯や順位戦C級1組で大活躍中の広瀬章人五段だ。
その広瀬五段が、また魅せてくれた。
序盤早々パンツを脱ぐ
2008/12/14に行われたNHK杯、広瀬章人五段VS阿久津主税六段戦(第1図)。なんとここから▲3七桂!
桂を跳ねれば4五の地点は先手側が制することができる。が、中終盤の寄せ合いを考えたら、大幅に玉の堅さが低下するこの手は相当指せない。「これで戦える」と見極めた広瀬五段の大局観に感嘆。ご本人のブログでは、以下のような感想が述べられている。
序盤で作戦負けになりそうだったので思い切って穴熊の隣にいる桂馬をジャンプしてみました。解説の渡辺竜王、対戦者の阿久津六段共に意表を突かれていたようでした。確かに一目はどうみても暴走なのですが、今回は意外にも大変でした。
本局の解説は、「NHK将棋講座」2009年2月号に載るはずだ。
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「アナグマ王子」
広瀬五段は、角道を止める四間飛車、いわゆる「ノーマル四間飛車」で目覚しく勝ち続けている、現在唯一の棋士ともいえるかもしれない。そして広瀬五段といえば戦術書を著するほどの穴熊党(下記参照)。
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そこで本ブログでは、「ハンカチ王子」斎藤佑樹選手、「ハニカミ王子」石川遼選手、「テニスの王子様」錦織圭選手らになぞらえ、若い広瀬五段を勝手に「パンツの王子様」「アナグマ王子」*1と名付けてしまおう。
今後の活躍にますます期待したい。
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