「コーヤン流三間飛車 実戦編」書評

目次

実戦編

「急戦編」、「持久戦編」に続き、「コーヤン流三間飛車 実戦編」が発売となった。

中田 功 毎日コミュニケーションズ 2004-09

目次は以下の通り。

目次

序 章 コーヤン流の確認
第1章 超急戦に対する積極策
第2章 急戦の新研究
第3章 居飛車穴熊の新工夫
第4章 コーヤン流実戦編

「実戦編」と銘打っているが、3章までが半分以上を占め、実戦記である第4章のほうがページ数が少ない。3章までは、全2巻で紹介し切れなかった変化の研究手順紹介・解説となっている。

VS居飛車穴熊

第3章の「居飛穴の新工夫」とは、右銀を6二に待機して引き角(△4二角)にし、8筋をすぐ狙える形にしてくる序盤戦術のことだ。

新工夫というより、前から普通にある形だが、確かにこの形について取り上げた書籍は珍しく、三間飛車党にとって非常に参考になることは間違いない。

充実のVS急戦

第1章・第2章は、「急戦編」では取り上げられなかった変化についての解説、および新研究が紹介されている。個人的に、前著「急戦編」は様々な変化を早々に打ち切りすぎで、「難易度が易しい」というより「不親切」と感じていた。本書はそれを補って余りある内容で、大変参考になった。

VS▲5七銀左型急戦

例えば、下の第1図は前著「急戦編」でいえばP111の参考図の一手前、本著「実戦編」でいえばP42の第7図である。

【第1図は45手目▲5五角まで】
後手の持駒:角 銀 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v金 ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・v歩v歩|三
|v歩 ・ ・v歩 歩 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・v飛 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:銀 歩 
手数=45  ▲5五角まで

「急戦編」では第1図から△5七歩と打って「激しい展開になりそう」で解説が打ち切られている。

当ホームページ「三間飛車のひとくちメモ」の「研究用掲示板」で、これについて議論になり、「本当に振り飛車戦えるのだろうか?居飛車良しでは?」という結論で終わった(ログ消失)が、なんと「実戦編」で修正手順が示されており、第1図から△5七歩でなく「△3三角▲同角成△同桂▲5五角としてから△5七歩がより勝り、振り飛車良し」となっている(以下の変化については書籍をご覧あれ。非常に詳しく載っています)。

単に△5七歩の変化については「実戦編」でも結局述べられておらず、この変化も知りたい(振り飛車良くなるのだろうか)ところではあるが、より良い手順が解説されているのでまぁ良しとしよう。

VS▲4五歩早仕掛け

また、「実戦編」第1章「超急戦に対する積極策」では、「△7二玉・△9四歩型」における「振り飛車破り 超急戦ガイド」(深浦先生著)の変化は載っていない。つまり「△7二玉・△9四歩型」において、角交換をいれずに単に▲4五桂とする変化に対する振り飛車側の対策が、第1章では全く触れられていない。

これは、ページの都合上単に省いただけなのか、執筆のタイミング的に間に合わなかった(深浦本はまだ出たばかり)のか、それとも「深浦流」対策が見つからなかったのか。

では第1章では何が書かれているかというと、代わりになぜか前著で薦めなかった「△8二玉・△9三歩型」について新たな研究を示して「深浦流」破りの手順を解説し、振り飛車良しの結論となっている。

ちなみに深浦本P30に載っている▲6五角が「実戦編」では載っておらず、▲5四角と▲4七歩しか載っていない(やはり間に合わなかったのだろうか)。しかし、▲6五角△2二飛▲5六角で居飛車良し、と深浦本がしているところ、△2二飛の代わりに△4二飛とすれば、以下▲4三歩には△同飛として「実戦編」で解説されている変化に戻るので問題なさそうだ(▲5六角には4筋に飛車がいるので攻めが十分ありそう)。

各書籍をお持ちでない方、または級位者の方には、何を言っているのかさっぱりわからないだろうが、ぜひこれらを購入して手順を見比べていただきたい。非常に勉強になります(棋力アップに繋がる点もさることながら、居飛車寄り、振り飛車寄りの視点で描かれた各書籍を見比べることが非常に面白い)。

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この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

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