ずっと昔、「勝手に将棋トピックス」(id:mozuyama)様で時々紹介されていた伝説的(?)エントリー、「今日のリファラ」(例:「今日のよくわからないリファラ - 勝手に将棋トピックス」)。サイトに訪れる際に閲覧者が利用した、筆者が予測しなかった検索キーワードを紹介するエントリーだった。
私のこのブログも、2003年末に開設してからいろいろなエントリーを書いてきているので、結構意外で面白い検索キーワードで訪れる方々がいらっしゃる。主なリファラはなんといっても「2手目△3二飛戦法」と「新・石田流(7手目▲7四歩)」なのは言うまでもないが。私もこの「今日のリファラ」コーナーをやってみようかな。いや、やめておこう。
「ユーザーはなぜ検索しているのか」を正確に予測することが、検索サービスにとって最大の目標のうちの1つだ。(もう1つは、「その要求に答えるサイトはどれか」を正確に選定すること。)
以下本題。はじめに一行でまとめておくと、
あまり有望視されていないGoogleの新サービス「Knol」だけど、「Web検索の本質」と「巨人Googleの力」を考慮すれば、Wikipediaにとって脅威の存在となりうると考えられるのではないだろうか?
という内容。
「Knol」とは?
以下本題。まず、「Knol」とは?
Knolは、特定の分野をよく知る人が専門分野に関する解説を書き、それをユーザーと共有するためのツール。誰でも執筆できるが、Wikipediaとは異なり、執筆者を強調する形を取っている。すべてのknolページには(1人あるいは複数の)執筆者がいて、その名前が明記される。執筆者が編集責任を負い、コンテンツを管理する。読者は執筆者に改変を提案できるが、それを採用するかどうかは執筆者が決められる。また、同じトピックについて複数の競合するknolができる可能性もある。
Googleによると、Knolの目指す姿は、特定のトピックを検索する人が最初に読みたいと思ってアクセスするサイトだという。そのため、オンライン百科事典「Wikipedia」と同様、あらゆる分野およびトピックをカバーしていく計画だ。
そうした意味から、Knolは“Google版Wikipedia”とも目されているが、大きな違いがいくつかある。まず、原則として誰でも自由に記事を執筆・編集できるWikipediaに対し、Knolは執筆者が記名入りで記事を公開し、編集責任やコンテンツ管理も担うことだ。
したがってKnolでは、読者は記事に対して評価やコメントを投稿し、執筆者に意見を述べることはできるが、それを受け入れるかどうかの判断は執筆者に委ねられる。執筆者は必要と考える修正や追記を含めて、コンテンツ内容に責任を持つわけだ。
ただしこのプロジェクトは自己矛盾もかかえている。編集機能が筆者だけになく他のユーザーにもある場合、複数の者によって編集されていった結果、元の筆者のページといえる部分が曖昧になってくることや、あるテーマについて複数の筆者が登場した場合、それらを一般読者が比較することは難しいなどだ。(中略)
ぶっちゃけていえば、「Googleが運営するWikipedia」、となる。これについては「違う」という意見も多いので、興味ある方は適当にググって調べてほしい。
検索のタイプはたった2つ
一方で「検索の本質」について考えてみる。断っておくが、私はこの手の書籍を読んだことがないド素人(「Web担当者Forum」などのSEO関連のフィードは趣味で購読してはいる)だ。すでに書籍で同様の内容があったとしてもご勘弁されたい。というか読みますので教えてください。
検索のタイプは、大きく分けて2つに分けられると思う。
- What is "Keyword"?
- How about "Keyword"?
の2つ。これだけ。
前者は、マスコミ等で新たに現れたキーワードについて、「何それ?」という知識欲によって誘発される検索。急上昇検索ワードに現れるのがこちらだ。
後者は、機知になったキーワードについて、今そのキーワードにまつわる状況や出来事について調べる検索。「Go to "Keyword"」も、そのキーワードにまさに直接まつわるもの、という意味でこれに含めてしまってよいと思う。
例えば「Youtube」というキーワードについて、始めは「何それ?」という動機付けで検索をかけるわけだが、2回目以降に検索をかけたときは「Youtube」サイト自体に訪れたい、今Youtubeにはどんな面白動画があるの?見たい動画があるんだけど、あるかな?という「How about "Keyword"」(「Go to "Keyword"」含む)という動機付けに変わっているはず。この辺は、パーソナライズ検索の質向上を考える上でポイントになるだろう。これについては次回。
「What is "Keyword"」検索は、Knolが支配する、かも
この「What is "Keyword"」の動機で検索をかけたとき、みなさんが検索結果中で真っ先にリンク先をクリックしたがるのが「Wikipedia」だと思う。基本的に、「Wikipedia」は検索結果トップ10に入っているので、知名度・(大概)安心感抜群、なのは言わずもがな。信憑性は別として、「だれでも自由編集」主義に則ったWikipediaの量的イニシアティブ(アドバンテージ)がとにかく凄まじい。だからこそ「Wikipedia絶対」説がある。
しかし、この検索領域は、うまくいけば(悪くいけば?)Knolが支配できてしまう。Googleは、これまでのテキスト検索結果だけでなく、画像や動画の検索結果も含め(Youtube検索結果はすでに入っている)、直感的にわかりやすいユーザビリティを保ったまま「一括」表示しようとテストを続けている。いずれこの中にKnolも入ってくるに違いない。そうすると、ユーザーにとって「What is "Keyword"」欲は満たされてしまうので、もう検索結果内のWikipediaに訪れる必要がなくなってしまう。
さらに、パーソナライズ検索において、同じキーワードが3度、4度と検索されている場合は、ユーザーは「How about "Keyword"?」欲で検索をかけている可能性が非常に高いので、「What is "Keyword"?」欲で訪れるであろう「Wikipedia」のページランクをがくんと下げてしまう、というアルゴリズムを導入しても何ら問題ないかもしれない。理にかなっていて、ユーザーの満足度も上がる可能性がある。今はこんなアルゴリズムは入っていないと思う。さらに突っ込んだ話は次回。
結果、Wikipediaのページビューは落ちる。すると、利用されないサイトのボランティア編集を好き好んでやる人はなかなかいないので、Wikipediaの質は落ちる(新規キーワードがなかなか登録されない、内容の成熟が進まない、など)。すると、ページビューはさらに落ちる。・・・という負のスパイラルが始まる可能性がある。Wikipedia運営の資金面も心配だ。では、Wikipediaが「How about "Keyword"?」検索領域に踏み込めるか?いや、できないだろう。
このように、Google検索結果とWikipedia検索結果を両方表示するような、マッシュアップ系の検索サイトはすでに存在しているが、そういうサイトの利用者はWebに精通したアーリーアダプターしかいないから、問題にならない。本家Googleが、Knol情報を検索結果に直接表示したとき、ゲームが始まる。いやむしろ、そもそもKnolが軌道に乗ってページが増えるかそれともこけるか、そちらこそが真のゲーム。この真のゲームでGoogleは敗れる、という意見が大勢を占めているわけだが、量的に少なくとも、「Knol情報を検索結果に表示したときのサブゲーム」の影響は結構大きいと私は思う。とっとと載せてしまえばいいと思うのだが、中途半端な情報を載せてもユーザー満足度を下げる可能性が多分にあるためできないのだろうか。ちなみに直近の2008/08/19のデータでは、Googleの評価が圧倒的。
ミシガン大学の四半期ごとのユーザー満足度の指数が今日(米国時間8/19)発表された。ウェブサイトの分野ではGoogleがトップになった。満足度は100点満点で86点(昨年に比べて10%アップ)。 Yahooは3%ダウンの77点。MSNは変わらず75点でNYTimes.comとABCNews.comに並んだ。AOLは昨年から3%アップの69点。
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