声に出して読みたい手筋(2)「本問題形式の意義とは?」

超難問を1問だけ出しておこう。

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問題

▲6四歩  △同 歩
▲6六歩

ヒント1:なんとこれで桂が助からない。

ヒント2:羽生善治四冠 VS 米長邦雄名人戦(段位はいずれも当時。便宜上先後逆。)

解答は、「続きを読む」からどうぞ。

「声に出して読みたい手筋」問題形式の意義

このような、「局面無しで、手筋から局面をイメージする問題」というのは、長い将棋の歴史上これまで存在しなかったかもしれない(私が見たことがないだけかも)。どう問題名を名付けるべきか。「図面無し次の一手」?全然違う。
少し考えた挙句、「手筋に脚光を当てる。将棋にはすばらしい手筋があることを伝えたい」という意味を込めて「声に出して読みたい手筋」と名付けてみたのだった。

ところで上記問題、「ヒントさえなければ他のいろいろな手筋にも当てはまるじゃないか。例えば・・・」とお思いになる方もいらっしゃるだろう。それでいっこうに構わない。正解は1つではない。
この問題形式で鍛えられる能力は、いわば「イギリス式足し算」。CMか何かで見たのだが、イギリスの小学校教育では、足し算を

2+6=?

として教えるよりも、むしろ

?+?=8
「?」に当てはまる数字の組み合わせを列挙しましょう!

というような問題を好むという。答えは1つではない。想像力を働かせましょう、というもの。

本問題形式も同じ。手順部分の要点さえ抑えれば、その周りの駒の配置は解答者各々の想像性にまかせる。自分の過去の対局を思い浮かべて駒を配置するも良し、前エントリーで述べたような空想を広げるのも良いだろう。
ただし注意が1つ。「手筋を成立させるための必要最小限の駒組みは抑えること」が必要だ。例えば前エントリーで出題した第2問「ダンスの歩」(本エントリー再掲載参考1図)において、▲6五歩は必須駒である。そうでないと、解答の手順中▲5四歩に対し△6四金!が成立し、以下▲4三歩成△同金▲4四歩のときに△5四金上!が成立してしまう。

「ダンスの歩」を問題にしたのはよいとして、この問題の解答図を具体的にどう作ろうか考えているうちに、私自身「なるほど、▲6五歩や△6三歩が必要なのか。」と気付かされたし、この手筋をより正確に身に付けることができたと思う。「作意」を表現したいがために駒を最適に配置しようとする詰め将棋作家の思考過程と似ているともいえそうだ。

このように、これまで単に丸暗記で覚えられがちだった手筋に対し、理由付けを行なうことができ、基礎や要所を固めることができるようになる。手筋の先入観にはまり、「似て非なる局面」でうっかり使ってしまうようなポカも減ることだろう。

厳密に「手筋」を用いた出題でなくても良い

この「声に出して読みたい手筋」問題は、「手筋」とは明らかにいえない、だけど皆が知っている(将棋ファンならば知っておくべき)「絶妙手」を、適当なヒントを添えて出題していただいても構わない。このような問題もまた、忘れかけていた記憶の呼び起こしや、とりわけ過去の名局・名手を振り返ることで「将棋への興味の回帰」という有意義な効果が期待できる。
例えば参考2図。NHK杯戦、羽生善治先生VS加藤一二三先生戦における、絶妙手▲5二銀。

図面を見ていないものとして、想像してみよう。

「あー、あの将棋ね。」
「何それ?」
「知らないの?将棋は、たった1手の絶妙手からでもその将棋を特定することができる、高貴なゲームなんだ。ラーメン王がスープ一口でそのラーメン店を特定できることなんて目じゃない。店の数よりも棋譜の数のほうが圧倒的に多い。店主の数よりも棋士の数のほうが圧倒的に・・・いや、これはラーメン屋に負けるか。もとい、▲5二銀は、玉の退路をふさぐ絶妙手。・・・あれ?右からのしばりは何だっけ?序盤は相掛かり棒銀から・・・あれ?角換わり棒銀だっけ?」
「・・・じゃあ調べてみようか。」

こんな会話から、気軽に将棋に触れる機会が増えるとうれしい(これも妄想ですね)。

一問一問、じっくり噛み砕いて考えて解く(問題を作る)面白さがあると思う。ぜひ皆さんのブログ等で、問題の出題をお試しあれ。

解答


例えば解答図。第52期名人戦、▲米長邦雄名人VS△羽生善治四冠戦より(段位はいずれも当時)。解答図から△4六歩▲同銀△4四歩で、なんと△3六歩からの桂取りが受からない。「なかなか見えにくい新手筋」と当時呼ばれた。ある意味、「押して(グイっと△4六歩)」「引く(じっと△4四歩)」たった2手に凝縮された、「スピコン(スピード・コントロール)」の超濃縮還元版と言えそうだ。

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この記事を書いた人

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」作者、兼二児のパパ。将棋クエスト四段。
「三間飛車の普及活動を通して将棋ファンの拡大に貢献する」をモットーに、奇をてらわない文章とデザインで記事を書き続けています。

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